CLSの役割



私たちは、様々な場面で、ストレスの高い出来事やトラウマとなりうるような出来事に直面する可能性があります。例えば、病気や入院、大切な人の死、暴力や災害などの予期せぬ出来事は、子どもだけでなく、大人にとっても、大きなストレスや不安となるものです。  特に子どもは、認知的にも情緒的にも発達途中にあり、大人とは異なる方法で物事を理解し受け止めています。そのため、子どもが、このような出来事を理解し、乗り越えていくためには、専門的知識を持った専門家の適切なサポートが必要です。十分なサポートが得られないと、子どもたちは、恐怖、混乱、孤独感、羞恥心、罪悪感などを抱え、その情緒的な不安定さは、子ども本来の成長発達を妨げ、将来的にもマイナスの影響を与えてしまう可能性があります。

 例えば、医療現場の一場面を思い描いてみます。
白い廊下、白い部屋、白い人たち・・・見慣れない機械や怖そうな医療器具・・・。ヘンな臭い・・・。大きな音・・・。大好きなお父さんやお母さんも何だか泣きそうな顔・・・。
ここはどこ? この人たちは誰? 何をするの? それは何? 痛いの? お母さんはどこ? 
怖いよぉ。イヤだよぉ。おうちに帰りたいよぉ・・・。

子どもたちは、病院という非日常的な環境の中で、恐怖・不安・緊張・誤解・混乱の中にいる可能性があります。米国の古い文献には、病院で採血をするとき、抑制のために白いシーツでぐるぐる巻かれた経験を繰り返した男の子が、その繰り返されたトラウマ体験により、退院後も白いシーツで眠れなくなったというエピソードが紹介されています。大人にとっては何気ない病院の環境や医療処置も、子どもにとっては非日常的なものであり、トラウマ体験となりうるのです。

チャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)は、子どもの発達やストレスへの対処に関する専門知識を持ち、子どもと家族が困難な出来事に直面した時に、それを乗り越えるための支援をする専門家です。上述のような医療体験によって、子どもが心に傷を負うことのないように、心理社会的支援を提供します。病院での医療体験が、「僕、頑張ったよ」「病院でも楽しいことあったよ」と、少しでも優しく前向きなものとして、子どもの中に残ることを目指しています。

病院などでのCLSの介入に関しては、その効果が多くの文献で示されています。
例えば、米国小児科学会は、小児医療におけるCLSの必要性を宣言しています。最新のものでは、米国小児科学会が発行する雑誌「Pediatrics」の2006年10月号で、チャイルド・ライフの支援に関する宣言を更新し、病院以外の様々な施設でもチャイルド・ライフの支援が望まれると強く推奨しています。

<米国小児科学会 チャイルド・ライフの支援に関する方針の宣言 抜粋>
「チャイルド・ライフの支援は、小児医療において大変重要である。チャイルド・ライフの支援によって、子どもの入院期間短縮や鎮痛剤使用量の削減がのぞめるため、病院の予算節減にも役立つとの証明がいくつか示されている。この点に関しては、さらなる研究が望まれる。院内の様子や患者満足度調査からは、チャイルド・ライフ・プログラムが、子どもや家族、さらには病院スタッフにとっても良い影響があることは明らかである。子どもと家族の情緒的な安寧を支援するために、チャイルド・ライフ・スペシャリストは、保健医療制度の変革に常に適応しながら、今後も発展していくことが大切である。」

(チャイルド・ライフ・スペシャリスト協会 訳)

米国小児科学会 チャイルド・ライフの支援に関する方針の宣言 全文(英語)